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今回は21大都市のひとつである京都市の賃貸住宅市場について確認しましょう。
筆者は21大都市を、大都市型、独立都市型、学園都市型、地方中核都市型、地方都市型の5つに分類していますが、京都市は学園都市型に分類されます。
図1に総務省「2020年国勢調査」から作成した、京都市と全国の年齢別人口比のグラフを示します。学園都市型は、大学進学による流入で18歳~22歳の年齢別人口比が急激に上昇した後、就職による流出で23歳~24歳の年齢別人口比が大きく減少するのが特徴です。
ただし、18歳~24歳の変動期を除き、団塊ジュニア世代のピークまで、年齢別人口比は緩やかな上昇を継続していますので、大都市としての求心力は保たれています。
図1:京都市と全国の年齢別人口比 総務省「2020年国勢調査」より作成
京都市の「推計人口」から作成した京都市の1月、4月、7月、10月の1日時点の世帯数と人口の推移を図2に示します。新型コロナウイルス感染拡大により、多くの大学がオンライン授業に切り替えた影響で、通学可能圏に実家のある学生が賃貸住宅を解約して通学に切り替えたこと等から2020年度~2021年度にかけて京都市の人口は大きく減少しました。
一方で、世帯の単身化が急激に進んでいることから、この期間も世帯数は緩やかな上昇傾向で推移しています。新型コロナウイルス対策のフェーズが変わり、対面授業が増加した2022年度以降は、人口の減少幅が緩やかになり、世帯数の上昇幅が急拡大しています。
なお、住民票を移動しない学生も少なくなくないため、2020年度~2021年度の実際の人口の減少幅はもう少し多く、世帯数も減少していた可能性があります。逆に2022年度は、実際の人口は増加に転じている可能性がありますし、世帯数の増加幅もより大きい可能性があります。
以上を踏まえてCRIXの指標を確認しましょう。
図2:京都市の世帯数と人口の推移 京都市「住民基本台帳人口 長期時系列データ」から作成
CRIXから作成した京都市の面積別空室率推移を図3に、面積別賃料指数(2020年1月=100)の推移を図4に示します。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け人口が大きく減少していた2020年度~2021年度は、全ての面積帯で空室率が上昇していることがわかります。
京都市では学生向けに面積の狭い賃貸住宅が多く供給されています。学生が賃貸住宅を解約し通学に切り替えた影響を受け、20㎡未満の賃貸住宅の空室率の上昇幅が最も大きくなっています。
コロナ対策のフェーズが変わり、人口減少が止まり、世帯数が急拡大し始めた2022年度以降は50㎡未満の面積帯で空室率が改善傾向に転じました。
価格が高く、分譲マンションとの競合となる50㎡以上の面性期待の空室率は2023年以降に改善に転じています。
図3:京都市の面積別空室率推移 CRIXより作成
次に2020年1月を100とした賃料指数を見ていきましょう。
20㎡未満の賃料指数は2020年7月までは上昇しています。これは学生の入れ替わりのタイミングで賃料改定が行われたこと、コロナ禍となり、管理がしっかりしている賃貸住宅への需要が高まったこと等が影響していると考えられます。
コロナ禍の長期化により20㎡未満の賃料指数は2020年8月以降に下落傾向に転じました。コロナ対策のフェーズが変わった2022年度以降は、空室率の回復とともに賃料が下げ止まり、安定して推移しています。
20-30㎡の賃料指数は、コロナ禍による空室率の上昇が穏やかであったことから安定して推移しています。一方で、30-50㎡、50㎡以上の賃料指数は下げ幅が大きくなっています。面積帯の大きい部屋は賃料の総額が高くなることから、景気動向の影響を強く受けます。コロナ禍による景気悪化により、高額の賃貸住宅からの退去が進んだと考えられます。
コロナ前と比較して、京都市の空室率の水準は未だに高く、テナントの支払い賃料水準も回復していないことから、賃貸住宅市場の回復にはまだ時間を要すると考えられます。
図4:京都市の面積別賃料指数推移(2020年1月=100)CRIXより作成
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