2023年9月、当社は新たに代表取締役会長 CEOに米津 健一、
代表取締役社長 COOに辻村 都雄が就任する“2代表制”へと移行しました。
2024年6月期の業績と新中期経営計画(2025年6月期~2027年6月期)について、2人がお話しします。
- 【2024年6月期の振り返り】
- 売上高は創業来30年連続増収、利益も前期比2倍以上の過去最高益を達成
米津:2024年6月期の業績は、売上高は44.3億円、営業利益7億円、経常利益7.4億円、当期純利益4.2億円となりました。売上、利益ともに過去最高を更新して、よい形で終えることができました。お客様に、常に付加価値の高いサービスを提供し続けることができていると確信しています。
辻村:代表取締役社長 COOに就任して約1年、私の役割はとくにセールスとマーケティングに注力した営業面の生産性アップを実現することと認識していますが、営業を担うスタッフを中心に組織が成長している手ごたえを感じています。
米津:不動産業界は毎年6,000~7,000社の新規参入(宅地建物取引業者)で推移しており、当社のサービスには依然として高い需要があるものと認識しています。当社の新規顧客のうち約30%が開業から5年以内の事業者が占めています。新たに開業する事業者によるIT設備投資ニーズは、今後も高い水準で推移していくものと考えています。
辻村:管理ソリューション事業のマーケットが今後も需要増が見込める一方で、仲介ソリューション事業はより大きな需要を掘り起こしていける伸びしろの大きなマーケットです。主力の「賃貸革命」を中心に、無償利用も含めて当社のサービスを利用しているお客様は全国で約5万事業者となっています。そのうち有償利用は約6,000事業者ですが、「WMP(ホームページ作成ツール)」の利用が約2,000社にとどまっています。セールス、マーケティングに注力した施策によって過去最高の業績を達成した一方で、不動産業界で一気通貫のプロダクトとサービスを提供している当社はまだまだ成長の“推進”と“拡大”をめざせるフェーズにあると考えています。
2024年6月期 決算ハイライト
- 売上・利益ともに過去最高を更新、前期比2倍以上の増益へ
- “2代表制”への移行について
- 持続的な成長とさらなる企業価値の向上をこれまで以上に強力に推進するため、より機動的な組織をめざし経営体制を強化
米津:1994年8月の設立から満30年を迎えるタイミングで、持続的な成長とさらなる企業価値の向上を加速させていく目的で2023年9月に私が代表取締役会長 CEOに就き、新たに辻村に代表取締役社長 COOを務めていただく“2代表制”へと移行しました。経営と事業の執行をともに協力・分担することで、経営環境や経営状況の変化に即応していける体制としました。
辻村:これまでセールス、マーケティングをはじめ、異なる分野・業種で事業・組織の運営を手がけてきた実績を活かして、より付加価値の高いプロダクトとサービスの提供を実現していくのがCOOとしての私の役割と認識しています。この1年間、営業スタッフがより生産性の高い営業力を身につけるため、新しい価値観に基づいた取り組みを加速させてきました。とくに、お客様との接点が多いスタッフに対して、従来とは異なるアプローチを強化しています。
米津:私が会社の経営面を、そして辻村社長が事業面を担う役割分担で、これまで以上に中長期のビジョンから会社の将来展望を描く時間をもつことができました。2024年8月に新中期経営計画(2025年6月期~2027年6月期)を公表しましたが、今後も高い需要が見込まれるマーケットを踏まえつつ、さらなる成長の“推進”とさらにその先に“拡大”をめざす当社の“あるべき姿”をめざします。新しい成長をめざすには組織の基盤をより強固にする必要がありますが、辻村社長は約1年間とは思えないスピードで、スタッフ一人ひとりとコミュニケーションを深め意識改革を進めてくれています。これまでのキャリアと実績を生かしたセールスおよびマーケティング施策を軸に、人材の育成と組織の基盤強化に取り組んでおり、事業面を安心してまかせられる状況です。
辻村:組織の基盤強化として、まずそれぞれのスタッフが目標を決めて達成するという意欲を高めていけるミッションツリーをあらためて整理しました。とくに営業を担うメンバーを中心に日々、コミュニケーションをとりながらスピーディーなPDCAサイクルを実現していくことを心がけました。スピード感のある事業の推進・拡大をめざしながら、創業者である米津会長とはどんな小さなことでも報告・連絡・相談を欠かさないようにしています。設立から30年にわたって築き、育んできた日本情報クリエイトのDNAに、私の経験・知識・スキルをうまく融合していけるよう取り組んでいます。とくに顧客の志向やニーズを踏まえた付加価値の高いサービスの提供については、考え方だけでなく具体的な施策とノウハウを伝えることで新しい価値を提供していくやりがいを感じてほしいと思っています。
- 新中期経営計画(2025年6月期~2027年6月期)について
- 仲介・管理2つのソリューション事業のシェア拡大で、2027年6月期 売上高75億円、営業利益20億円をめざす
米津:前3カ年計画を経て、当社がどのような世界を実現したいのか改めて整理し、新中期経営計画を策定しました。これからの3カ年は成長推進期と位置付けて、これまでの成長投資を活かして、不動産仲介会社、賃貸管理会社をメインターゲットにしながら、不動産オーナー、入居者の顧客体験を変えていくための「不動産DXサービス」を提供して、新しいイノベーションをめざします。
辻村:事業戦略としては、仲介ソリューション事業は市場規模が大きく、今後も高い需要を見込んでいますのでシェア拡大に注力してまいります。そのうえで業績拡大の起爆剤となるのが、2024年秋のリリースを予定している「リアプロBB」です。「リアプロBB」は、当社の「不動産BB」とリアルネットプロの「リアプロ」を統合した新しいソリューションとして国内最大級の業者間物件流通サービスになります。
売上高・営業利益イメージ
重点施策のキーポイント
米津:「不動産BB」は2016年1月に提供を開始したものですが、無償サービスとして約49,000事業者(2024年6月末現在)に利用いただいています。リアルネットプロとの経営統合によって仲介市場で一気にシェア拡大がめざせるサービスの拡充を実現できる点が強みです。
辻村:「リアプロ」は全国でも札幌、名古屋、大阪のエリアを中心に高いシェアを獲得していましたが、「不動産BB」と統合することで全国どのエリアでもさらに便利なサービスが活用できるよう拡充されます。このこともシェア拡大を大きく後押ししてくれると思います。
米津:一方の管理ソリューション事業では「賃貸革命」が高いシェアを獲得していますので、サービスラインアップの拡充で付加価値を高め顧客単価アップをめざします。
辻村:賃貸管理会社のなかには、不動産仲介も手がけている顧客がいます。そんなお客様に、当社では管理と仲介、双方で付加価値の高いサービスを提供できることを積極的にアピールしていきます。新規顧客の獲得と稼働率のアップでさらなる売上と利益率アップをめざします。
- 2025年6月期の重点施策について
- 「リアプロBB」のサービス提供開始が収益拡大の起爆剤に
辻村:新中期経営計画1年目となる2025年6月期は、売上高50億円、営業利益10億円を計画しています。
売上の内訳をイニシャルとストックとに分けていますが、イニシャルの売上を10億円とする一方で売上全体の73.4%(2024年6月期実績)を占めているストックの売上アップをめざします。また当社では、月ごとにくり返し得られる収益である月間経常収益をMRR(Monthly Recurring Revenueの略)として重要な指標の1つとしていますが、この積み上げにも取り組んでまいります。
成長のキーとして期待しているのは、やはり「リアプロ」と「不動産BB」を統合した「リアプロBB」のサービス提供開始です。当社のサービスは0.5%(2024年6月期実績)と低い解約率が特徴で、有償では約6,000事業者、無償をふくめると約5万事業者の顧客数を誇ります。「リアプロBB」の開始により国内の不動産業界最大規模の業者間データベースが出来上がりますので、この強みを活かして一気通貫のサービスラインアップをアップセル・クロスセルしていきます。
- 株主の皆様へ
- 新中期経営計画の着実な実現を通して、さらなる事業拡大に向けて邁進いたします
米津:最後になりますが、当社は企業価値を継続的に拡大し、株主の皆様へ利益還元を行うことを重要な経営課題と認識しています。一方で、よりスピード感のある成長へ向けた積極的な投資も行っていきたいと考えており、将来の東証プライム市場への市場区分変更も視野に、さらなる事業規模の拡大に取り組んでいく所存です。株主還元については利益成長の状況も鑑みつつ、引き続き検討してまいります。
2027年6月期までを「成長推進期」、2030年6月期までを「成長拡大期」と位置付けた中期経営計画の着実な実現を通して、株主の皆様のご期待にお応えできる経営と事業の成長を図ってまいります。
引き続きご支援のほどよろしくお願いいたします。
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代表取締役 会長CEO
米津 健一
1981年4月、株式会社豊田自動織機に入社。その後出版業を営む株式会社ほるぷや、自治体向けにシステム開発をする株式会社プロデュースメディアを経て、1994年8月に当社を設立。代表取締役社長を経て、2023年9月、当社代表取締役会長に就任
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代表取締役 社長COO
辻村 都雄
1991年、京都産業大学 経営学部卒業後、株式会社リクルートに入社。2008年4月に同社のゼクシィ事業部門営業執行役員、2015年、マリッジ&ファミリー事業の執行役員事業本部長に着任。その後、スポーツマーケティングのB.MARKETING株式会社(現バスケットボール・コーポレーション)社長、エンジニアの人材派遣業などを行う株式会社メイテックフィルダーズの社長を経て、2023年7月に日本情報クリエイトに入社。同9月、当社代表取締役社長に就任
当社は仲介ソリューション事業、管理ソリューション事業それぞれで
さらなるシェア拡大を目的に、2024年7月に新しい事業部制をスタートします。
事業全体のけん引役を担っている取締役 事業統括の渡邉 良が
当社へのジョインから約1年間の手ごたえと将来へ向けた取り組みについてお話しします。
- セールスとマーケティングのプロとして新しい価値観をもたらす
- Q
- ご自身の職責と役割は?
2001年4月に社会人としてのキャリアをスタートして以来、セールスやマーケティングを軸に、事業・組織運営で培ってきた経験を活かして、辻村社長とともに新しい価値観でさらなる業績のアップに貢献していくのが私の役割だと思っています。
とくに不動産仲介会社向けのソリューションではもっとシェア拡大をめざせる伸びしろがあると感じています。そのため、顧客の顕在化しているニーズだけではなく、これから求められるニーズをとらえてマーケットの開拓までを視野に入れた取り組みを加速させていきたいです。
- 成長のフェーズにマッチした取り組みを加速
- Q
- この1年で感じたことは?
まずは2024年6月期の、売上、利益ともに計画を達成できたことに安堵と手ごたえを感じています。日本情報クリエイトは1994年8月の設立から、創業者の米津会長の構想に沿った魅力あるプロダクトと組織力とで事業拡大してきたと認識しています。これから “成長推進期”という次のフェーズを迎えるにあたり、米津会長はよく、0→1、1→10が終わって、今から10→100だというような言い方をされますが、これまでと同じ取り組みだけでは実現できません。今まで培ってきたリソースを土台に、外部からの新しい知見も加えつつ、次の3カ年、さらにその先の3カ年と先を見据えて、計画を描き着実に実現していくことが今後の成長に向けて非常に肝になる部分であると認識しており、土台がしっかりしているところに十分な伸びしろがあると感じています。
- 「リアプロBB」のリリースでさらなるシェア拡大を
- Q
- とくに注力していきたい施策は何ですか?
2025年6月期 第2四半期にサービス提供開始を予定している「リアプロBB」が、一気にシェアを拡大するための起爆剤になると期待しています。もともと競合だったリアルネットプロと経営統合することで、「リアプロ」と当社の「不動産BB」が一本化し、国内最大級の業者間物件流通サービスが実現します。
「リアプロ」は札幌、名古屋、大阪のエリアでは圧倒的なシェアを獲得しているという強みがあります。これが当社の使いやすさが魅力のプロダクトと統合することによって、豊富なデータベースを構築するとともに、双方の顧客が1つの基盤になります。
さらに事業分野で見れば、不動産仲介会社向けと賃貸管理会社向けのサービスが統合されることにより、シームレスなデータ連携が実現できます。仲介も管理もどちらもされているお客様も多くいらっしゃいますので、より個々のニーズに応じたお客様にとって付加価値の高い不動産DXサービスを提供できるのではないかと期待しています。
- “顧客と伴走していく”強みを活かして “成長の推進”
- Q
- 最後に日本情報クリエイトの強みと将来展望について教えてください。
創業者の米津会長がこだわって、ていねいに手がけてきたプロダクト開発とそのアップデート、そして顧客が使いこなせるように伴走していくシステムアドバイザーの姿勢こそが当社の強みだと思っています。ツールを提供するだけではなくて、初期設定や操作方法、既存のシステムからの移行まで、顧客が直面している課題にとことん向き合って解決する姿勢と実行力に高い信頼が寄せられています。
新中期経営計画は、これまで培ってきた基盤を次の “成長の推進”とさらにその先の“成長の拡大”へつなげていくための具体的な指標になります。この約1年間、米津会長、辻村社長と密接にコミュニケーションをとりながらPDCAサイクルのスピードアップにこだわってきました。
スピーディーなPDCAサイクルを確立するためには、「P:Plan=計画」から「D:Do=実行」、「C:Check=評価」、「A:Act=改善」までを、本気かつ全力で取り組む必要があります。この約1年でPDCAサイクルの「C:Check=評価」の結果から、どこを「A:Act=改善」していくべきかが明確になってきました。さらに一番重要な「D:Do=実行」の部分も、社員一人ひとりが推進する力やノウハウをつけてきています。これからの3カ年も引き続き、細かなPDCAを回して、いろいろな施策を試してチューニングしながら進むということをさらにブラッシュアップしていけば、計画を上回る成長を実現できると確信しています。ぜひ期待していてください。
-
取締役 事業統括
渡邉 良
2001年、京都大学 経済学部 経済学科卒業後、住友商事株式会社にてメーカー向けのサプライチェーン構築のプロジェクトを担当。その後株式会社リクルートにて、新規事業開発、営業組織のマネジメントに従事。広告代理店の株式会社メディアハウスホールディングス、スポーツマーケティングのB.MARKETING株式会社(現バスケットボール・コーポレーション)役員を経て、2023年9月に日本情報クリエイトに入社。営業本部次長、取締役 営業本部長を経て、2024年7月より取締役 事業統括に就任
ビッグデータが世の中で注目される以前から、当社ではデータの重要性に着目。
業界トップクラスのデータ量であるビッグデータを有効活用し、
新たなソリューション提供を推進するデータ戦略室の取り組みについて紹介します。
- データ戦略室のミッション
これまで当社で蓄積してきた不動産に関するビッグデータを活かして、新たなサービスを作ったり、既存サービスをよりよいものにすることが、私たちのミッションです。生成AI、機械学習モデルなど最新のAI技術を活用した商品開発に取り組んでいます。
- これまでにビッグデータを活用してローンチしたサービス
CRIX(クリックス)
日本の賃貸住宅の賃料と空室率の指数を開発。
(2023年提供開始)
例えば、港区の2LDKマンションの平均家賃や空室率はどのくらいか、など全国各地域の賃貸住宅状況の推移を把握することができます。実際の管理データから算出した全国をカバーする指数はCRIXが国内唯一のもので、大学や企業の研究機関にもデータをご提供するなど、不動産業界外からも非常に注目をされています。
AI査定
例えば新しくマンションを貸し出す際の家賃をいくらにするか、売却する物件の価格をどのくらいにするかを、AIを使って査定するサービスです。
他社でも類似サービスはありますが、当社は約100億件という膨大なデータを持っていることから、高い精度での査定が可能であり、その査定結果の誤差率を示すMERは「1.05」と、業界最高水準の精度を実現しました。※1※2
この「AI査定」は当社の新製品「空室対策ロボ」のレポートのコンテンツにも採用されています。
※1 業界調査は日本情報クリエイト・Studio LOC調べ、調査年月2023年8月、AI賃料査定システムの他社公表数値より。
※2 MERとは、AIが算出した賃料査定結果と実際賃料との差額を、実際賃料で割った値(誤差率)の中央値のことです。このMREの値が小さいほど誤差率が低いことを示します。なお、当MERの数値は、日本情報クリエイトが2023年8月時点で全国のマンションをランダムに84万戸抽出して算出したものであり、今後変動となる可能性があります。
ChatGPT活用「サポートAIチャット」
当社主力サービス「賃貸革命」の操作に関するお問い合わせにChatGPTを活用して回答するサービスです。
当社コールセンターに蓄積された情報とChatGPTを掛け合わせることで、精度の高い回答ができるようになり、顧客支援の価値向上・業務の効率化を図ります。
- 今後の展開
ビッグデータという言葉が世の中で広がり始めたのは2015年頃ですが、創業者である米津会長は、それよりずっと以前からデータの重要性に着目しており、いち早くデータ収集を行っていました。これにより現在、業界内トップクラスのデータ量を保有しています。さらに、当社データ戦略室のメンバーは、全員がデータサイエンスに造詣が深いというところが強みです。同業他社でもビッグデータを持っているところはありますが、ただデータがあるだけでは有効活用できません。データサイエンティストによる新しい切り口や専門的な視点が非常に重要です。
私たちは、日本情報クリエイトをデータドリブン※3な会社にすることをめざしています。商品開発以外にも、営業活動などにおいて、データから導き出した戦略を用いることで成約率の向上や効率化を図れると考えています。さらには、研究機関、不動産投資、不動産開発など、社会で広く当社のCRIXが活用され、賃貸住宅データといえば日本情報クリエイトであると認識されることを目標に日々研究開発を進めています。
※3 データドリブン(Data Driven)とは、売上データやマーケティングデータ、WEB解析データなど、データに基づいて判断・アクションすること。
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執行役員 データ戦略室 室長
林 宏
1988年4月に三井信託銀行(現三井住友信託銀行)、1999年7月に野村アセットマネジメントに入社。クオンツ(金融工学の専門家)、ファンドマネージャーを歴任。2009年9月に米大手金融機関フィデリティ・インベストメンツにてクオンツ責任者として従事。その後、国内IT企業にてビッグデータ事業の立ち上げを経て、2020年7月に日本情報クリエイトに入社
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データ戦略室
植松 幸希
2004年、東京大学農学部 水圏生命科学専修を卒業、東京大学大学院にて博士(農学)学位を取得。
国立研究開発法人にて従事した後、2024年6月に日本情報クリエイトに入社