【不動産オーナー・管理会社向け】インボイス制度とは?概要や対応方法

2024.02.06

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インボイス制度とは、消費税の複数税率に対応するための仕入税額控除の方式です。インボイス制度は不動産管理会社にも影響します。この記事では、不動産オーナー・管理会社向けにインボイス制度の影響を詳しく解説します。状況に応じてどのように対応すればいいかについても解説するため、ぜひ役立ててください。

 
 

インボイス制度とは何か

インボイス制度とは、複数税率に対応している消費税の仕入税額控除の方式です。仕入税額控除を適用するには、インボイス(適正請求書)の受領が必須となります。

インボイス制度の正式名称は「適格請求書等保存方式」であり、2023年10月1日から開始しました。インボイス制度下では一定の要件を満たしているインボイスを、売り手が買い手に発行しなければなりません。また、売り手と買い手の双方がそれぞれインボイスを保存する必要があります。

 

インボイスとは

インボイスとは適格請求書のことで、貸主が借主に対して発行する書類です。インボイスを作成すると、売り手から買い手に対し、消費税額や適用税率を正確に伝えられます。

  • 登録番号
  • 消費税額
  • 適用税率

ただし、インボイスは誰でも自由に発行できるわけではありません。インボイスを発行するには、適格請求書発行事業者になるための申請が必要です。具体的には以下のような対応を行います。

概要詳細
売主(貸主)側の対応インボイスを発行する準備が必要1.適格請求書発行事業者の登録
2.インボイスを発行(登録番号の発行)
3.インボイス交付後はインボイス発行者控えを保存
買主(借主)側の対応発行されたインボイスの記載事項が十分かの確認が必要1.登録番号を確認
2.請求書の確認
3.インボイス受領後はインボイスを保存
 

課税事業者でもインボイスを発行できない場合がある

注意点として、課税事業者であってもインボイスの申請・登録が完了していない場合はインボイスを発行できません。課税事業者=適格請求書発行事業者ではないということです。

あくまでもインボイスの申請・登録を完了させている事業者が適格請求書発行事業者であるため、課税事業者であってもインボイス登録されていなければ、インボイスは発行できない点に注意しておきましょう。

 

制度導入後はどうなるのか

インボイス制度導入後は、以下の事項が変更になります。

  • 消費税の計算方法:1つの請求書で税率ごとに1度の端数処理が必要請求書での記載事項:従来の請求書項目に「インボイス登録番号・適用税率・消費税」を追記
  • 請求書の保存義務:売主・買主それぞれ請求書を7年間は保存する義務が発生

前提としてインボイス登録していない事業者は、インボイスを発行できません。そのような事業者が売り手となった場合、買い手が仕入税額控除を受けられなくなり、消費税の計算において不利になる場合があります。

よって、免税事業者や適格請求書発行事業者でない事業者と取引している企業は、インボイス制度の開始後にさまざまな対策を講じる可能性があります。たとえば、消費税分の割引を求めたり、インボイス登録されていない事業者との取引を避け、登録が完了している適格請求書発行事業者との取引を優先したりなどといったパターンが考えられます。

 

インボイス制度はなぜ導入されたのか

インボイス制度が導入された背景には、免税事業者の益税問題があります。従来、免税事業者も代金に消費税を上乗せした金額を買い手に請求する、というケースが一般的でした。しかし、免税事業者は消費税を納める必要がないため、消費税として上乗せして請求した金額は免税事業者の利益になります。

インボイス制度が開始すると、免税事業者との取引は買い手にとって不利になるケースが多くなるため、免税事業者との取引停止が考えられます。そのような事態を避けるには、免税事業者がインボイスの申請・登録を行い、適格請求書発行事業者としてインボイスの発行が必要です。その結果、免税事業者が減って益税問題を解消できると考えられています。

 

不動産管理会社へのインボイス制度の影響

インボイス制度は、不動産管理会社にどのような影響を与えるのでしょうか。以下でくわしく解説します。

 

免税事業者の大家の競争力が低下してしまう

貸主がインボイスを発行しない場合、テナントである借主は家賃の消費税を仕入税額控除できません。借主の負担が増えて利益が減るため、借主は貸主へ消費税分の減額を要求する可能性があります。また、インボイスを発行できる物件へ移転する恐れもあるでしょう。

いずれにせよ、免税事業者として不動産を貸し出していると、ライバルの物件よりも競争力が落ちるリスクがあります。インボイスの申請・登録を行い、適格請求書発行事業者としてインボイスを発行しないと、テナントを維持しにくくなるでしょう。

 

法人化で得られる節税効果が薄まる可能性がある

所有する不動産の管理を不動産管理会社に委託して管理料を支払うケースでは、資産管理会社が免税事業者か適格請求書発行事業者かによって、不動産オーナーが得られる節税効果が変わります。不動産管理会社が適格請求書発行事業者ではない場合、不動産オーナーは仕入税額控除を受けられず、節税効果が薄くなります。

一方、インボイス登録されている適格請求書発行事業者である不動産管理会社を選べば、仕入税額控除が可能です。そのため、不動産オーナーは、適格請求書発行事業者の不動産管理会社を選ぶ可能性が高くなります。

 

テナントの収益性が落ちる原因となりうる

テナントがもともと免税事業者である場合、インボイス制度に対応するために課税事業者になれば、これまでに得ていた消費税分の益税がなくなります。その結果、負担できる賃料の水準が下がる恐れもあります。

 

免税事業者の不動産オーナー・管理会社におけるインボイス制度の対応方法とは

免税事業者である不動産オーナーや管理会社は、インボイス制度にどう対応すればよいのでしょうか。以下でくわしく解説します。

 

消費税の課税対象となる売上がない場合の対応方

消費税の課税対象となる売上がなければ、インボイスを発行する必要はありません。消費税の課税対象になる売上とは、店舗や事務所の賃料、駐車場代、太陽光発電の収入などです。ただし、駐車場に関しては以下の条件下では非課税扱いとなります。

  • 一戸建ての場合:駐車場付きの賃貸物件は家賃に駐車場代が含まれるため非課税
  • マンション等の場合:一戸あたり1台以上の駐車スペースがある場合は家賃に駐車場代が含まれるため非課税
  • 居住用の場合は非課税対象であるが事業用は課税対象

基本的に、住宅の家賃収入には消費税が課されません。

 

課税対象の売上がある場合の対応方法

課税対象の売上がある場合は、テナントが免税事業者か課税事業者かによって対応方法が異なります。それぞれについて解説します。

 

テナントが免税事業者である場合

テナントが免税事業者であれば、そもそも仕入税額控除を適用する必要がありません。よって、不動産オーナーは、そもそもインボイスの発行を求められないでしょう。

 

テナントが課税事業者である場合

テナントが課税事業者であれば、インボイス制度への対策を検討する必要があります。状況に応じて慎重な判断が必要です。具体的な対応方法については次で解説するため、ぜひ参考にしてください。

 

課税売上があり、テナントが課税事業者の場合の対応方法は2つ

課税売上があり、テナントが課税事業者である場合、対応方法は2つに大別できます。以下でくわしく解説します。

 

課税事業者になり、インボイス登録をする

課税売上があるうえにテナントが課税事業者である場合、不動産オーナー・管理会社も課税事業者になって、インボイスを発行する方法があります。売上が1,000万円未満であっても課税事業者になることは可能です。また、登録すればインボイスも発行できます。インボイスを発行すると借主が仕入税額控除できるようになるため、物件の競争力の低下を防げます。

特に、多くのテナントが課税事業者であり、今後の事業拡大も検討しているなら、課税事業者になってインボイスを発行したほうがよいでしょう。

 

免税事業者のままでいく

課税売上があってテナントが課税事業者であるとしても、免税事業者のままいる方法もあります。その場合、特別な手続きは必要なく、それまでと同様の対応を続けられます。

ただし、インボイスを発行できないため、課税事業者である借主から賃料の減額を要求される可能性があるでしょう。また、借主が他の物件へ移るリスクもあるため、課税事業者にならない場合も、今後について考慮したうえで判断する必要があります。

 

課税事業者になる前に知っておきたい注意点とは

課税事業者になるなら、課税事業者になった後どうなるかを具体的に理解しておく必要があります。課税事業者になれば納税義務が発生するため、経理の手間も多くなります。なぜなら受け取った消費税の全額をそのまま納税するわけではなく、実際の納税額を計算する必要があるからです。具体的には、売上に係る消費税額から仕入に係る消費税額を際し引いた金額を納税します。

ただし、簡易課税制度も利用可能です。簡易課税制度では、仕入額を売上額の一定割合とみなして消費税を計算します。

 

課税事業者の不動産オーナー・管理会社の対応方法

課税事業者である不動産オーナーや管理会社は、インボイス発行事業者の登録手続きが必要です。課税事業者の条件は、以下のとおりです。

  • 法人:2期前の課税売上が1,000万円を超えている
  • 個人事業主:2年前の1月から12月の基準期間で課税売上が1,000万円を超えている
  • 基準期間で1,000万円の課税売上がない場合:税務署に課税事業者としての届け出をする

以下で詳細を解説します。

 

課税事業者はインボイスを発行できるように事前手続きが必要

課税事業者がインボイスを発行するには、適格請求書発行事業者になるための手続きが必要です。登録手続きは2021年10月1日から始まっています。インボイス制度がスタートする、2023年10月2日以降の日に適格請求書発行事業者の登録を行う場合、申請日から15日以後の登録希望日が発行事業者の効力が始まる日となります。

課税事業者がインボイスを発行するには、適格請求書発行事業者になるための手続きが必要です。登録手続きは2021年10月1日から始まっています。インボイス制度がスタートする、2023年10月2日以降の日に適格請求書発行事業者の登録を行う場合、申請日から15日以後の登録希望日が発行事業者の効力が始まる日となります。

 

インボイスの登録の流れを解説

インボイスを発行するには、税務署に適格請求書発行事業者の登録申請書を提出する必要があります。税務署の窓口に出向くだけでなく、郵送やe-Taxによる電子申請でも書類の提出が可能です。事業者自身が手続きできますが、税理士に依頼しても構いません。

 

まとめ

インボイス制度は、不動産オーナーや管理会社に大きな影響を与えます。対応次第で物件の競争力も左右される可能性があるため、状況に応じた最適な対応を検討しましょう。

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